台中国家歌劇院

約15年ぶりに台湾中部の台中市で建築巡りをして、「台中国家歌劇院」が造形、インテリア的にとても印象に残る建築でした。設計を手掛けた伊東豊雄氏がポルトガルを旅行中に耳にした野外コンサートに着想を得て「建築を聴く」を原点として建物の輪郭やあちこちに洞窟のような穴と呼吸する穴を通しました。外観を、より自然に近い「いきもの」として構想し、幾何学的ではなく自然な有機体らしいライン、起伏が連なるカーブを描いた曲面壁を主な構造体とし、さまざまな大きさの洞窟のような空間を生み出しました。

ガラスやコンクリートの外壁はあちこちがワインのボトルのようなフォルム。建築家の伊東豊雄氏はこれを「壺中居」と名付け、良酒に酔いしれるように舞台芸術に心酔することを象徴しています。

カーブを描く曲面壁が建築物の構造体そのものとなっています。曲面壁と洞窟でさまざまな大きさのスペースを生み出し、スペースはそれぞれゆるやかにつながっています。1Fロビーはとても広く感じて気持ちいい台空間となっています。

2Fホワイエへ登ると「呼吸する気孔」が至る所に見かけます。呼吸するような穴は自然界の生物が命の営みに必要な太陽光、空気、水を取り入れる気孔を模しています。陽光がここから歌劇院に差し込み、夜になると館内の光がかすかに外に漏れ、さまざまな明るさの光を放ちます。明るさはうまくコントロールされ、いい感じに落ち着く空間。

3F以上の階段動線も有機的なラインを描き、どこと繋がっているんだろうと、思わず登ってみたくなります。

中の飲食店も高い天井と大きいガラス面を活かし、開放的で気持ちいいスペースでした。

さらに屋上庭園があり、ファサードで見た「壺」の頭が散りばめられています。そこに自然にできた庭園動線を廻りながら周りの街景色が一望できます。休憩スペース、アーティスト造形作品、グリーンと一体化された建築、計算し尽くされたデザイン。

この建築の最大の特徴:「カテノイド」と呼ばれる三次元曲面の構造。床や壁、柱などの境界が曖昧で、連続した空間が水平垂直に枝分かれしながら広がります。床が壁になり、壁が柱として機能し、天井につながり、上の階の床へと緩やかに変化し、不思議で独特な空間体験でした。

2024-03-07 04:29:53